「それでいい。そんなお前だからこそ頼むんだ。俺は常に美来と一緒にいるわけにはいかない。クラスも同じだし、食堂でも二階席に行けるお前の方が一緒にいる時間も多いからな」

 そして俺はニヤリと笑う。


「それに、お前は今のところ一番美来を泣かせる心配がなさそうだからな」

 純情になってしまった久保を少し皮肉るように言った。


「うぐっ……でもまあ、泣かせるような真似はしねぇけどよぉ……」

 皮肉はしっかり受け取ったのか、久保は苦い顔をしつつも同意する。


 そういう素直な部分もあるから、尚更任せても良いかと思えるんだよな。
 まあ、それは言ってやらないけど。


「でもな、奏」
「ん?」

 珍しく俺のことをちゃんと名前で呼んだ久保は、真剣な目で俺を見た。


「お前さ、美来と同じ顔でその表情はやめてくんねぇ?」

 マジキツイから、と付け加えられて思わずキョトンとしてしまう。


 まあ、確かにそれもそうか。

「あー……悪い」

 納得は出来たので、謝るだけは謝っておいた。







 ……その後久保も部屋に帰して、俺はすぐにノートパソコンを開いた。

 高峰 銀星。

 こいつのことをもっと調べないとならない。

「全く、美来は何でこうも面倒なやつと遭遇してしまうのかな?」
 
 うんざりと呟いて、俺はさっき久保に見せたのと同じスマホ画面を見る。


 そこには、この付近では有名なある家の名前が表示されていた。


 高峰組。


 この辺りで一番大きな極道の家の名前だ……。