ここで黙り込むだけなら、さっき言った美来を守るのを手伝えって言葉は撤回(てっかい)しなきゃならない。

 だから、それを確かめるために問いかける。


「じゃあ、美来が《かぐや姫》だって分かったから、お前んとこの総長達に教えるのか? 二年間お前らが探していたのはあいつだって」

 その瞬間、気落ちしていた久保の目に怒りにも似た力が宿るのを見た。

 思わず俺は口角が上がる。


 ……それでいい。


「っふっざけんな。んなこと出来るわけねぇだろ? そんな理由だけで、あいつの隣に立つ権利を奪われてたまるかよ!」

「っは!」

 思わず声を上げて笑ってしまった。


 思った以上の答え。
 合格だよ。


 美来を自分のものにするだとか、取られてたまるかとか、物としてあつかう言葉をこいつは使わなかった。

 しかも、“隣”に立つ権利ときた。


 美来を弱い存在として後ろにいさせるわけでもない。
 逆に美来の後ろに立って、あいつのやることなすこと肯定する存在になるわけでもない。

 あくまで対等な相手として、隣に立ちたいって久保は言ったんだ。


 そんな難しいことは考えてないだろう。

 でも、考えなくてもすぐに出てきた言葉だ。
 当然のように思っている言葉じゃなきゃ出てこない。


 だから、合格だ。