……こいつ、今は熱があるから何もしないだろうけど、元気になったら今まで以上に美来にちょっかい掛けそうだな。

 振り返らずに、考えを巡らす。


 これは、ぶっとい釘を刺さなきゃならないかな?


「……双子って言っても二卵性だから、普通はそこまで似ないんだけどな」

 言いながら眼鏡を外し、振り返る。
 顔を隠すようにした前髪もかき上げ、顔を見せた。


「……そっくりだな」

 軽く見開き、そんな感想を漏らす久保。

 俺達を見たやつは大体そう言うから、聞きなれた言葉だった。


「一応お願いするけど、俺達の素顔のこと黙っててくれないかな?」

 見定めるような眼差しを向けながら言ってみる。
 普段の久保の様子を考えると「知るか」とでも言ってはねのけられそうだったけど……。


「あー……まあ、別に言うつもりはねぇけどよ」

 久保はそう言って後頭部を()きながら視線をそらす。

 予想とは違う反応に少し驚いた。
 でも、やることは変わらない。


「それは助かる」

 と、美来が見ていたら胡散臭い笑顔とでも(ひょう)されそうな表情で笑い、直後動く。

 久保の胸倉を掴み、膝裏に蹴りを入れる。


 まさか俺がこんなことをしてくるとは思ってもいなかったんだろう。
 驚きの表情のまま、久保は床に倒れた。