いくら何でも、熱で倒れるような女に変なことはしないだろうと思う。

 けど、久保はその辺り常識が通じなさそうだと思ったから油断は出来ない。


 ガチャ

 思ったより早くドアが開き、困った様子の久保が出てきた。


「美来はどうした?」

 こいつの様子なんてどうだっていい。
 とにかく美来の無事を確認したかった。

「ああ、奏っつったか? 美来なら中で寝てるぞ?」

 そう言って以外にもアッサリ部屋の中に通してくれる。

 靴を脱いで中に進むと、久保のベッドの上で顔を赤くしながら眠っている美来がいた。
 髪を解いて、眼鏡を外した状態で。


「っ!?」

 美来の素顔を久保に見られた!?


 美来に近付き、状態を確認する。

 額に熱を冷ますシートを張られている以外に変わりはないように見える。

 少なくとも、制服がはだけたりはしていない様だった。


 一先ずホッと息をつく。


 あんな久保でも、そこまで非常識じゃなかったか。

 でも、美来の素顔を見られてしまった。


 ったく、転校して地味な格好までしていたってのに!
 いったい誰のためだと思って……。


「……なぁ、双子ってことはお前もそんな顔してるわけ?」

 背後で久保がそんなことを言ってくる。