地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

「……綺麗だな」

 そう呟いた唇が、重なる。

 …………え?
 重なる?


 唇に触れる柔らかいものは、この名前も知らない相手の唇。

 驚きで見開いた目に映るのは、獲物を狙う獣のような黒い瞳。


 触れるだけのものだったけれど、軽く吸い付かれて小さくリップ音が鳴った。

 離れていく男の顔が、ニッと俺様な笑みに歪む。


「お前、俺の女になれ」

「……は?」

 そのふざけた命令にも頭が痛くなりそうだったけれど、それよりも唇を奪われたことの方が重要だった。

 だって、今のは両親以外で初めてするキス――ファーストキスだったんだから。


 初めてのキスは好きな人と。
 そんな普通の憧れを持っていたあたし。

 昔から何かと狙われやすかったあたしは、特にその憧れを大事にしていたんだと思う。

 キスくらいは普通に、憧れるままにって。


 なのに、奪われてしまった。

 こんな、名前も知らない不良に、突然。


 嘘……。


 信じたくなくて、頭がくらくらする。

 こんな奴すぐにでもぶん殴ってやりたいけれど、ファーストキスを奪われたショックが激しい。


 そうして抵抗も出来ずにいると、黒髪の男に攻撃を仕掛ける人がいた。