「お、あ、あのな!? 嬉しいけど、ちょっとマズイって言うか!? と、とりあえず離れてくれないか? 美来」

 何とかあふれ出るものを止められたころ、そう言われて離れる。

 でも同時に背後から声が聞えた。


『え?』

 同じ声が二つ。
 重なった一文字の声。

 明らかにあたし達に向けられた声だと分かったので、つい涙をぬぐいながら振り向いてしまった。


『え?』

 今度はあたしと久保くんの声が重なる。

 だってそこにいたのは……。


「え? 何? 今その子のこと美来って言った?」
「え? は? 嘘だろ? だってその子《かぐや姫》なんじゃ……」

 青と赤の派手な髪色を揺らし、同じ顔を同じく驚きの表情に変えてその双子はいた。


 それでもそのままだったらまだ誤魔化せたのかもしれない。

 でもあたしは思わず口にしてしまったんだ。

「勇人くん、明人くん……」

「っ! み、く?」
「わ……マジでか……」

 彼らの名前を呼んでしまっては、もう誤魔化すことも出来なかった。


 やっちゃったー!

 でもそれなら仕方ない。

 先手必勝!


 そうすぐに気持ちを切り替えて決意すると、あたしは素早く二人の元に行ってそれぞれの手を握った。