暴れるのを止めたあたしにホッとしつつ、バツの悪そうな表情で久保くんは話してくれた。

「あー、こないだ風邪ひいたお前のことちょっとだけ看病しただろ? あのとき素顔見たから……目の色違ってたからあのときは気付かなかったけど、まさか《かぐや姫》だったとはな……」

「っ! お願い、言わないで!」

 素顔を知られてしまっていたなんて。


 でもちょっと分かった。

 あたしの姿を見て久保くんだけはなんか別の意味で驚いた顔をしていた理由。

 《かぐや姫》があたしだって分かっちゃったからだったんだね。


 それならもうすでに八神さんとかに話している可能性もあったけど、でもお願いせずにはいられない。

 なんかバレてるかも? って思うこともあるけれど、彼ら三人には特にバレるわけにはいかないから。


「大丈夫だよ。言わねぇから安心しろ」

 その言葉に安心したあたしは、続けてポツリと言われた言葉がよく聞こえなかった。


「……《かぐや姫》って理由だけで取られてたまるかよ」

「え? ごめん、なんて言ったの?」

「……なんでもねぇよ」


 少しぶっきらぼうに言って目をそらした久保くんは、改めてあたしを心配そうに見る。

「それより……大丈夫か? その、さっき泣いてただろ?」

 心配してくれるその優しさに、押し込めていた悲しさがぶり返す。