と言っても全ての教室を覚えているわけじゃないから、北校舎のどこに連れて行かれているのかは分からない。
これ、帰りも案内して貰わないと迷っちゃうかも……。
普通の学校ならそうそう迷う事もないだろう。
でも、このマンモス校では一つの校舎だけでもバカでかい。
さっきから階段を下りたと思ったら上がったり、何度も角を曲がったり。
もう来た道順なんて覚えていない。
しかも人の気配があまりないところに来ているみたいで、もしここで放り出されたら人に案内を頼むことも出来ず迷いまくるだろう。
と、それだけでも不安だっていうのに……。
「ね、ねえ……あたしを連れて来いって言った人って誰?」
これから会うであろう人を思うと不安どころか拒絶反応を起こしそうだ。
それでも確認しておきたくて聞いたのに、久保くんは黙って歩いていく。
あたしからは彼の金髪が歩く度にふわふわと揺れる様子しか見えない。
綺麗に染められたその髪は、もともと細い髪なのか柔らかそうだ。
触ったら気持ちよさそうだなぁ、なんて少し現実逃避してみた。
まあ、触る機会なんてないだろうけど。
答えは無くても予測は出来る。
《月帝》のNO.3だっていう久保くん。
その彼が言うことを聞く相手。
確実に《月帝》の総長か副総長とかいう人たちでしょう!



