「えっと、じゃあ俺用事あるから」

 久保くんは泳がせた視線をそのまま明後日の方に固定して、言うが早いか去って行ってしまった。


「……奏、久保くんとなんかあった?」

「ん? まあ、ちょっとな」

「……」


 これは、はぐらかされたな。


 それが分かったけど、話すつもりがないことも良く分かった。

 話しても良いって思ってるなら奏はあたしにこんな言い方しないもの。


「まあいいや。じゃあ行こっか」

「ああ」

 そうして第二学生寮とは名ばかりのアパートから出たあたし達は、三人との待ち合わせ場所に向かう。



 二人で歩いていると、ふと常々思っていたことを聞いてみることにした。

「そう言えば奏はさ」

「ん?」

「男友達、いないの?」

「……」

 今回誘ったときもそうだけど、他に誰かと遊ぶ約束とかしていないみたいだった。


 奏はちょっと腹黒いところもあるけど基本は気さくな人間だ。

 だから、地味な格好をしていたとしてもそろそろ友達とか出来ててもおかしくないのに……。


 あたしの場合は早々にいじめとか始まっちゃったから、しのぶ以外に友達が出来たのが最近だったけれど。

 でも奏は友達を作る時間くらいたくさんあったはず。


 それなのに出来ないなんて……なんで?