その久保くんは挨拶を終えると自分の席に座り、早速突っ伏して寝始める。

 大体がそのまま寝っぱなしなんだけど、たまーに視線を感じてふと見ると視線が合うときがある。

 すぐに逸らされるけど。


 何か言いたいことでもあるのかと聞いてみるけど、「何もねぇよ」と返されるだけ。

 でも何度も同じことがあるからしのぶにも相談してみたんだけれど……。


「……美来、罪な子」

 と、かわいそうなものを見る目で見られた。

「純情少年になっちゃった久保くんにはそういうアプローチしか出来ないんだから、実害がないならそのままにしてあげたら?」

 続けてそう言われたけれど……。

 純情少年は何となく分かっても、何であたしにアプローチするのかが分からない。

 それにああやって見てくるだけなのに何のアプローチなの?


 っていうか、純情少年になってしまった理由も分からないのに。

 しのぶは「美来が原因でしょ?」なんて確信気味に言うけれど、身に覚えがないから違うと思う。

 絶対他に原因があるはずだよ。

 まあ、わざわざその原因を突き止めようとも思わないけれど。


 そんな感じで些細な疑問はあるけれど、あたしの学校生活はやっと順調に始まって行った。