「……美来と奏の歌声はもう少し独り占めしていたかったなぁ、って思って……」

「しのぶ……」

 ちょっと、キュンとしてしまった。


 独り占めしたいくらい好きだと思ってくれてたんだ。

 そう思うと嬉しい様な少し照れちゃう様な……。


「うーん、じゃあ今回は止める?」

 でも香がそう提案すると。

「ううん! あたしも二人の歌声聞きたいし! それに独り占めしたい気持ちもあるけれど、みんなに知ってほしいって気持ちもあるから」

「うん、じゃあ次の休みはカフェとカラオケね! 美来は奏くんに話しておいて」

「分かった」

 奈々が話をまとめて決定してくれたので、あたしも了解の言葉を返す。



 そうして休みの予定なんかを決め終えたころに、隣の席の久保くんが登校してきた。

「あ、久保くん。おはよう」

「……はよ」

 チラリとあたしを見て、少し嬉しそうに目元を緩めてから短く挨拶を返してくれる。


 最近の――というか、いじめ問題が解決した後からの久保くんはいつもこんな感じ。

 しかも毎日朝から登校する上に午後にも授業を受けるようになった。

 ……ほぼ寝てるけど。


 それに何より無闇にあたしに触れてこなくなった。

 どういった心境の変化があったのか知らないけれど、少し優しくもなったしあたしは今の久保くんの方が好感持てるから良いな。