今回《月帝》の下っ端が退学になったのは、あの美来という女を襲おうとしたからだったか。

 だが、彼女は返り討ちにしたと聞いた。


 後で双子が興奮気味に話して聞かせてくれたからな。

 カッコ良かったとか、綺麗だったとか。


 ほどかれた髪がサラサラと舞うさまが、神秘的だったとか……。

 正直。


「見て、みたかったな……」

 思わず呟く。

 さぞかぐや姫のような美しい髪をしていただろう。


 そこまで考えハッとした。

 彼女は《かぐや姫》じゃないはずだ。

 なのにどうしたって連想してしまうのはなぜだ?


 考えて、一つの可能性を思いつく。


 目の色はブルーグレーではなく薄茶色だと聞いた。

 ……そう、聞いただけだ。


 俺は、自分では確認していない。


 森兄弟は彼女の兄から聞いただけ。

 司狼は実際に確認したと言っていたが、どういう状況だったのかは分からない。

 彼女の目をしっかりと見たのか。
 部屋の明かりで違って見えたとか、カラコンの可能性だとか。

 そういう可能性も考えたうえで確認したのか。


 ……司狼の性格を考えるとそこまでは考えていない可能性が高い。

「これは、確かめる必要があるか……?」


 他にもやらなくてはいけないことはあるが、彼女の目の色を確認しなけれはならないだろう。



 これは、最重要事項だ――。