すると、あたし達の会話を聞いていたしのぶが「やっぱり」と楽し気に話し出す。

「そうだろうなとは思ってたけど、美来って無自覚な人たらしなんだね。一番厄介なやつだ」

 と言って笑う。


「うぐっ」

 悪気はないんだろうけど、一番厄介って……地味に刺さって来る。


 でも本当にどうすればいいのか分からないんだもん。

 仕方ないじゃんか……。


 そうして少し落ち込んでいるところに、いつものように眠そうな久保くんが登校してきた。

「何だこれ? 人口密度多すぎじゃね?」

 そう言って自分の席に来た久保くんにあたしは近寄る。


「おはよう久保くん」

「……はよ」

 久保くんは視線を反らしながらだけど一応挨拶を返してくれる。


「金曜日はありがとね? あんまり記憶がないんだけど、奏が来るまで看病してくれてたんだって?」

 一度意識を手放したらあとは熱に浮かされてしまって、よくは覚えていない。

 後になってから奏に聞いて、お礼を言っておけよと言われたんだ。


「あ、ああ。気にすんな」

 そう言ってあくまで目を逸らし続ける久保くんに不信感が募る。


「……ねぇ、あたしが意識ないとき、変なことしてないよね?」

 病人にそんなことはしないと言っていたけれど、こう挙動不審だと心配になって来る。