「ま、また同じことが起きない様に目を光らせてくれるって言うんだから、そうしてもらえば良いんじゃないか?」

「……そうだね」

 奏にそう言ってもらって納得する。


 でも、良いのかな? とも思う。


「ねぇ、奏……」

「ん?」

「あたしって甘いかな?」


 いつだったか空手の先生に言われたことがある。

『その甘さがいつか命取りにならなきゃいいけどな』

 命取りなんてそこまで危険なこと、そうそうないだろうけれど……。

 先生はそれであたしが傷つかないか心配してくれている様だった。


 時には甘さを捨てる覚悟を持てって……。


 それでもあたしは捨てきれない。

 そして、奏はそれをよく分かっていた。


「ま、良いんじゃないか? そういうところもお前の魅力だよ」

 だから、そう言って慰めてくれる。

「……ありがと」

 あたしはその慰めに、後ろめたさを消した。


「……でも、誰彼構わず人をたらし込むのは控えて欲しいけどな」

 付け加えるように言われた言葉に、ギュッと眉を寄せる。

「……それ、何度も言われているけどどうしていいのか分からないんだけど?」

 自覚すらしてないんだからどうすればいいのかなんて分からない。