「……はっ」

 しばらくして、俺は自分が息を止めていたことに気付いた。

 呼吸を取り戻し、冷静になろうとする。


 でも出来そうにない。


 心臓がバクバクと音を立てて、胸が痛いくらいだったから……。


「ちょっ、うそだろ?」

 初めての感覚に心がついて行かない。

 何かを確かめたくて、俺は美来に手を伸ばす。


 その柔らかそうな頬に触れれば何か分かる気がしたんだ。


 でも、その手は触れることなく止まる。

 っていうか……俺、今までどうやってこいつに触れてた?


 触れれば壊れてしまいそうなほどの繊細な美しさに、触れることが出来ない。

 ついさっきまで普通に触っていたはずなのに、どうやって触っていたかなんてキレイサッパリ忘れてしまった。


「おいおいおい」


 マジで俺、どうしちまったんだよ!?


 その後からの俺はポンコツで、こいつの兄の奏が来るまでに出来たことと言えば熱を冷ますためのシートを額に貼ってやることだけだった。