帰りたい。

 そう思っても午後にも授業はある。

 本当にエスケープするわけにもいかず、あたしは梅内さんと2-Bの教室へ戻ってきた。


「とりあえず久保くん今日は休みみたいだし、午後も頑張ろう? それに久保くんはホントたまにしか来ないし、大体寝てるばかりだから大丈夫だよ! そんな関わり持つことなんてないって!」

 前の席から一生懸命に励ましてくれる梅内さん。

 本当に優しい。
 ちょっとマジで涙が出てきそうだよ。


「ありがとう、梅内さん」

 笑ってお礼を言うと、彼女も笑顔を返してくれる。

 それが嬉しくて、あたしはもう少しお近付きになれるように提案してみた。


「あの、さ。名前で呼んでもいいかな? しのぶちゃんって」

 ダメとは言われないだろうけど、馴れ馴れしいって思われないかとドキドキしてしまう。

 でもあたしの心配を吹き飛ばすような笑顔が向けられた。


「もちろん! むしろちゃんもいらないよ。あたしも名前で呼んでいい? 実は奏くんと美来を呼ぶとき同じだからちょっと困ってたんだ。“くん”と“さん”で一応区別はつくんだけど……」

 困ったようにはにかむ梅内さん――しのぶに、あたしも「もちろんOKだよ!」と答えた。