「や、八神くんに……だっ抱きしめられて!」

「抱きしめられて?」

 一瞬何のことか分からなかった。

 でも今日のことを思い出して理解する。


 ああ、久保くんにあたしをセフレにするなって言ったときのやつか。

 ……いや、でもあれは抱きしめるって言うようなものじゃなかったんだけど。


「八神くんにどうやって取り入ったか知らないけれど、あなたみたいな地味な子は彼に似合わないのよ!」


 まあとりあえず、宮根先輩は八神さん推しってことか。

 これで理由は分かった。

 あとは、この人の悪事を暴かないとね。


「……っだから、あんなことしたんですか?」

 調子に乗せるために少し震えてるような演技をする。

 怖がっている、と思わせる。


「ふん、そうよ。あなたのシューズロッカーや机に嫌がらせして身の程をわきまえさせてやってと指示したの」

「他のことは……?」

「他? 特に指示はしてないけど、あなたが嫌がりそうなことをやってとは言ったわね」

 こっちの思惑通りに調子に乗ってくれた宮根先輩は、会話を誘導させられている事にも気付かずしゃべってくれる。


 でも階段から突き落とそうとしたこととかは出てこないか。

 やっぱりあれは昨日の派手女子関係の方かなぁ?