良し、言質は取った!

 これでもし何かされても八神さんに言いつけるって言えば大人しくなるかも!


 そんな期待と安堵を覚えると、あたしは顔を上に向けて八神さんを下から見る。

「八神さん、ありがとうございます」

「……おう」

 お礼を言うと、八神さんは肩を抱く腕に一瞬だけ力を込めてから離れて行った。


 最初に会った印象は獣のようだったけれど、案外優しいところもあるのかもしれない。

 少なくとも対久保くんには得難(えがた)い人材だと思った。


 とにかくあたしは食事も終わったのでそのままテーブルから離れる。

 すると示し合わせたわけでは無いけれど、心配してくれていたのか勇人くんと明人くんが階段の手前で待っていてくれた。


「美来、大丈夫だったか?」
「久保に変なことされてねぇか?」

「二人とも心配性。食べてる間は久保くんも大したことしないよ」

 変態発言はするけれど。

 と心の中でだけ言っておく。


 それに、とあたしはついさっきの八神さんとのやり取りを話す。

「へー、総長命令か」
「じゃあ久保もそうそう手は出せなくなったな」

「だよね?」

 と三人ニコニコで会話をしていると。


「なぁにが『だよね?』だ」

 低い声がしたと思ったら頭を上からガシリと掴まれた。