黙り込んだ八神さん。

 その顔にはもう怒りの感情は見て取れない。

 自分でも不可解だ、って顔をしている。


「……それも、そうだな」

「じゃあ別にいいっすよね? こいつ俺のセフレにしても」


 って軽い調子で何抜かしてんだこの変態!

 まあ、扱い的にそうだろうなっては思ってたけど……。


「あたしセフレになんてなるつもりないんだけど?」

 頭だけ振り返って言うと。


「まあ任せろって。ちゃんと仕込んでやるから」

 ニヤリと笑って言われた。

 話が通じない。


「だからぁ――」

 流石に本気でイラついてきたのでハッキリ言ってやろうとしたんだけれど……。


 グイッ

 久保くんの方に向き直ったあたしの肩を抱くように、八神さんが腕を回してきた。

「え?」


「ダメだ」

「は? 八神さん?」

「良く分かんねぇけど、こいつをお前のセフレにすんのはダメだ」

「えー……」

 何だそれ、と思わなくも無かったけれど、それで久保くんが諦めてくれるなら願ったり叶ったりだ。


 八神さんは久保くんにさらに念を押す。


「セフレはダメだ。分かったな?」

「……へーい。分かりましたよ」

 不満そうではあったものの、久保くんは承諾の返事をした。