教室へ戻ると、しのぶがあたしの机を必死に拭いているのが見える。
それだけである程度の予想はついた。
近付いて見えたのは、あたしの机に油性ペンで色々と書きなぐられている文字をしのぶが何とか消そうと奮闘しているところだった。
「あーもー消えない!」
必死過ぎて近付いてきたあたしにも気付かない。
もう、しのぶってば……。
あたしのためにこんなに必死になってくれて正直嬉しい。
でも巻き込んでしまいかねないからちょっと困る。
「しのぶ……」
「え? っあ!」
声をかけてやっとあたしに気付く。
そのまましまった、という顔をしていた。
あたしは困り笑顔を返して、自分のバッグから除光液を取り出す。
「貸して」
と、しのぶの持っていた綺麗めの雑巾に浸みこませて机を拭いた。
「あ、消えた……」
「こういうところに書かれた油性ペンは除光液で消えるよ。本当は柑橘類の皮の汁の方が良いんだけど、今はこれしかないからね」
そうしてささーっと消してしまうと、しのぶは複雑な顔をしていた。
なんとなくその顔が、【こっそり役に立ちたかったけど出来なくて悔しい】って表情に見えた。



