こげ茶の髪はパッと見ただけでもわかるほどサラサラで、男にしては細めの眉の下には少し垂れ気味な目。

 男の人に使う表現ではないと思いつつも、お人形さんみたいに綺麗な人だと思った。


 ん? あれ?
 でもどこかで見たことがあるような……?


 そんな疑問を抱いていたせいで座るタイミングを逃してしまう。

 結果、その王子様とバッチリ視線が合ってしまった。


 ふわりと優しく微笑んだ彼は、「笑ってごめんね」と言って近付いてくる。


 え? いやいやいやいや!
 来なくていいですから!


 ただでさえ悪目立ちしているのに、こんな王子様が加わったらまた別の意味で目立ってしまう。

 でもだからと言って今あたしが座ってしまったら、彼を無視しているように見えてしまう。

 だから仕方なく、気まずい気分であたしは立ったままその王子様を待っていた。


「君たち、二年に転入してきた双子だろう? 聞いているよ」

 その話し方と雰囲気で彼が三年生だと分かる。

 王子様はあたしと奏を交互に見てからあたしに視線を戻した。


「ただでさえ目立つんだから、こんなことをしたら悪目立ちしてしまうよ? それに、お兄さんをあまりいじめないように」

 後半は冗談っぽく言われたけれど、あたしは委縮(いしゅく)して「はい」と返事をすることしか出来なかった。


 元を(ただ)せば奏が悪いんだけれど、ここで反論したら三年生に盾突いてるようにも見られかねない。

 あたしはとにかく王子様がすんなり去ってくれるのを待った。