……今のって聞き間違い?
 聞き間違いだよね?

 暴走族とか言ってないよね?
 しかも二つのグループが同じ学校とか。

 それ以前にその暴走族の幹部と、でっかいグループ商事の御曹司とかが一緒くたにされて二階席にいるとか……。

 うん、やっぱり聞き間違いだ。


 あたしはちぎったパンを口に入れてしっかり三十回噛んで飲み込む。

「ふーん。そんな凄い御曹司とかご令嬢もいるんだ。ま、あたしとは関りなさそうだけどね」

 そう言ってまたパンをちぎってジャムを付けていると、奏が「おい」と低い声を掛けてきた。


「暴走族云々のところスルーすんなよ」

 この学校の事情を黙っていた奏に言われて、冷静さを保っていた糸がプツッと切れる。



 聞き間違いってことにしておきたかったのに!


「奏、あんたあたしが不良とか暴走族とかをすっごく嫌ってる事、知ってるよね?」

 確認――するまでもないけど、まずはそう聞いた。


「ああ、まあ。だから黙ってたんだし」

 事実を知ってあたしが怒るのは分かっていたんだろう。

 奏は悪びれもせず淡々と答えていた。


「一緒の学校に行くってのはいいよ? 理由も理解出来るし、あたしのためでもあったから」

 落ち着きを装ってあたしも淡々と話す。

「でもね、あたしが不良嫌いって分かっててここに決めたのは何で?」

 その質問に、奏はちらりと梅内さんを見てちょっと視線をそらした。