まさか、あたしが《かぐや姫》だってバレてはいないよね?


 一番特徴的な目の色はバレていないんだから、知られるはずがない。

 二年前に一度会っただけなんだ。
 顔だって覚えているはずがない。

 だから最悪目の色さえバレなければ知られるはずはない。


 そう、思うのに……。

 あたしを見つめる目は自信に満ちていた。


 如月さんはまたあたしに手を伸ばし、サラサラと揺れる髪を手で()く。

 その目が、気持ちよさそうに細められた。


「……ゴム、返してください」

 一刻も早く如月さんの前から去らないと。

 そのためにゴムを返してもらわなくちゃならない。


「ん? ああ」

 如月さんは思ったより素直にゴムを返してくれる。

 「ほら」と差し出されて片手を伸ばすと、その上にゴムを落としてくれた。


 でもその手をそのまま掴み引き寄せられる。

 顔が近くなったところで、冷たい声で囁かれた。


「なぁ、お前の目は本当に薄茶色か?」

「っ!?」

 核心を突くようなセリフに思わずビクリと体で驚きを表す。


 だ、ダメよ!

 ここは誤魔化さないと!

「そうですよ? 見ますか?」

 あたしはあえて笑顔を見せて誤魔化した。


「……」
「……」

 数秒の沈黙。

 先に折れてくれたのは如月さんだ。