それを見た瞬間、俺はもう邪魔をしないことに決めた。


 田中を獲物を狙う目で見た時は怖いと思ったけど、杉沢さんはちゃんと正攻法で田中をモノにしていった。

 ちょくちょく田中の家の理容室に行っては自分をアピールしたりして、周りから固めて行った手口なんかはマジでやりすぎじゃないかとも思ったけど。


 それでも将来まで見据えて田中の事を考え行動していた。

 だから、もう俺の出る幕はないな、と思った。



 そうして気付けば花の高校生活も終わっていたけど、大学では俺も可愛い彼女が出来たりと充実していたし、まあ良かったんじゃないかなと思う。


 俺達も付き合っちゃう?


 あの日、そんなことを言ってみたせいで俺の高校生活は部活と田中を守ることだけで終わってしまったけど、まあその経験も全くの無駄ではなかったし良かったのかな、と今では思う。


 将来、俺が田中姓になった杉沢さんに髪を切ってもらって、俺の嫁さんが田中に髪をセットしてもらう。

 そんな未来もあるかもしれない。


《了》