地味男はイケメン元総長～番外編集～

　嫌いなわけじゃないからって……俺の事好きなくせに、何でそういう言い方するんだよ。

　段々腹が立ってきた。

　そのせいで俺はちょっと冷静さを無くしていたんだと思う。


　だからちょっとしたイタズラ心が芽生える。


「ふーん。……じゃあ、付き合うってことがどういうことか分かってるんだよな？」

　そう言って、俺は立ち上がり座っていた場所に自分の飲み物を置く。

　沙良の正面に来て、屈んだ。


「え？」

　沙良の後ろにある壁に右手をつくと彼女のキョトンと不思議そうな顔が近付く。

　ジュースを飲まれないように左手で彼女の飲み物を軽く押さえ、俺は更に顔を近付ける。


　触れるだけのつもりだった。
　でも、沙良の唇の柔らかさと、直前まで彼女が飲んでいたオレンジジュースの香りが俺に自覚を促す。

　俺は今、好きな女の唇を奪っているんだということを。


　その事実に、少しの欲情が湧き上がる。