私の知らない恋の話。

私はくる間に風に吹かれて少し絡まった髪を押さえつけて、もういっそうのこと括ってしまおうかと迷う。


「今日の授業なんだっけ」
「数学と現代文と……英語はどっちだったっけなー……」


森沼くんの後に続いて教室に入る私は一応思考を巡らす。


全部学校に教科書を置き去りにしている私にそういうの関係ないからわかんない。
毎日背中に背負ったリュックは筆箱とファイルと、もえが朝から作ってくれるお弁当くらい。


……あれ、今日お弁当、入れたっけ。


「なぎ」


背後に、もえの声。


「……あ、」


振り返ると、手にはお弁当。


「家に、忘れてた」
「……ん?」


森沼くんの不思議そうな声。
差し出されるお弁当をガン見している。


「……って、ママさんが」


付け足したようなフォローが一応通じたのか、あぁなるほど、的な顔でカバンを机に置く。
ホッとして、「ごめんね」と愛想笑いで受け取った。