私の知らない恋の話。

もえは不満げな顔でプルルル、とリップロールをする。
いや、可愛いかよ。


「じゃあ後でね」
「……うん」


私はもえを残して部屋を後にした。


後でね、って言ったのはクラスが隣だったから。
授業によっては同じ教室。


ゆっくりめに歩いて30分、学校に着く。


「あ、おはよ〜」
「……おはよ?」


昇降口、今日はここで出会った。


「森沼(もりぬま)くん」
「今日は早いね〜、なんかいいことあった?」


いつもは教室、私の隣の席でにっこにこで待ち構えてくれている森沼くんだけど、今日は私の足が速かったのか、昇降口で出会った。


「何もないよ。今日は少し寝坊したぐらい」
「どれくらい?」
「30分ぐらいかな。準備に問題はなかったけど、ゆっくりは出来なかった」
「結構だな、朝起きるのって辛いしなー」
「私朝弱いからな〜……直したい」


そんな中身のあるような無いような会話をしながら教室までゆっくり歩く。