音無くんと初めて会ったのは高3の春だ。

放課後校舎をウロウロして、1人になれる場所を探していた時に出会った。


図書室なら静かじゃない?と思い、図書室へ向かっていた。
この学校がいくら最低ランクの荒れた高校でも、図書室くらいはあるだろう。

3年生にもなったのに、この学校の図書室に行くのは初めてだった。


ただあたしは

静かな場所を求めて図書室へ来た。


ヤンキーの溜まり場になってなきゃいいけど。そう思い図書室に近づくと、誰かの声がした。


とても綺麗で図書室の扉に手をかけたまま、少しの間、固まってしまった。


何、これ。


何か音楽が流れている訳ではない。
誰かの声だけで紡がれたメロディー……


あぁ、そうか。誰かが歌ってるのか。


そう認識するのに少し時間が必要だった。あまりにも澄んだ歌声だったから。

誰が歌っているのか気になり、図書室の扉を開けた。


そこには、突然現れたあたしを、驚いた顔で見つめる男の子がいた。


この人……知ってる。


「音無くん?」


同じクラスの男の子だ。話したこともないし、名前も今日初めて呼んだ。