音無くんは、今日も図書室で歌う

卒業式当日


色々なことを考えていたら、卒業式が終わり、クラスでの先生の話も終わっていた。

友達と話していて、少し目を離した隙に、音無くんは教室から居なくなった。
あれ、おかしいな。さっきまで居たのに。


「先生、音無くんは帰りましたか?」

「え?音無?帰ったんじゃないかな」


はぁ。最悪。
一言も話さず終わってしまった。

図書室に行けば会えるかもしれないよね。友達に別れを告げて図書室へ向かう。

音無くんも、きっと……居るはずだ。
最後にここで歌って卒業するはずだもん。


そう思って走ってきたのに…


「居ないのか」


泣きそうになった。
一言も話せないって酷いよ。さよならくらい言ってくれたらいいじゃん。

友達とも呼べないくらいの距離感だったかもしれないけど、一応約1年間放課後を共にしたんだよ?

まぁあたしが勝手にここに来てただけだけどさ。


音無くんの居ない図書室は、広くて、静かすぎて、寂しいよ。


あたしはこの1年何度も聴いた歌を口ずさんだ。音無くんの声を、初めて聴いた時の曲。

何度も聴いてきたから歌詞もメロディーも全て覚えていた。


大好きだったな



「全然歌わないと思ったら、君音痴だったんだ」


「………え?」


「一瞬、僕の歌だとは思わなかった。ドア閉めれば?」