冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す



――出穂との出逢いは、八月。
太陽からの狂気じみた熱が地上でくすぶり続けていた、真夏の昼間。

その頃の俺は、うまくいかないことが重なり……正直に白状すれば折れかけていた。

八月には入居可能とされていたマンションの完成時期がずれ込んだのだが、それまで住んでいたマンションの部屋はもう手放す手続きが済んでいたため、急きょ新しい部屋が必要となった。

入居可能になるまでの仮住まいとして用意してもらった部屋は角部屋で、立地的にはそこまで悪くないものの、壁が厚くないらしく、他の部屋の音が気になってなかなか寝付けない日々が続いていた。

せっかく整理してまとめた荷物を仮住まいで開けなければならないことにも苛立っていた。マンションの完成時期がずれたせいで、引っ越しは完全な二度手間だ。

そもそも、頼んだ引っ越し業者の対応も最悪だった。
皿は何枚も割れていたし、専用駐車所までは徒歩二分と記載されていたのに、どう頑張っても五分はかかる。ついでにWi-Fiも不安定で、上の階の子供は遅くまでうるさい。どいつもこいつもふざけるなと思った。

夏バテなのか、体調もすこぶる悪く、割れた皿のクレームを入れる気力も残ってはいなかった。
諦めたほうが早い。

もうすべてが面倒でしかなかった。

そんな、最悪なタイミングでインターホンが鳴った。