冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す



『でも、コロンとしていてすごく可愛いとは思います』

同居して以来、出穂の純粋な笑顔を見たのは、たぶん、これが初めてだった。
毎日、本人が不快に感じない程度に顔色だとか健康チェックをしている。だから、彼女の体調がよくなっているのはわかっていたが、笑顔を見て、ホッとした自分に気付いた。

俺は医者じゃない。

真似事をするつもりはないと出穂には言ったが、それでも、こうして家に置いている以上、こいつのメンタルや体を守れるのは俺だけだ。見守る義務がある。

今まで他人と好んでつるんで過ごしてこなかったため初めて負う種類の責任だったが、不思議と面倒だとは感じなかった。

『まぁ、丸いし可愛くなくはないな。どれが一番気に入ってるんだ?』
『えっと……これ、ですかね』
『亀か』
『はい。他のキットの残りを使って、甲羅の色を少しカラフルにしたんです。亀って幸運を運んでくるって聞いたことがあるので、カラフルな方が幸せそうだなって思って』

大量の編みぐるみは、作った本人も特に手元に置いておきたいという思い入れはないと言うので、出穂を頼んでいる不動産会社の窓口で欲しがる客に配ってもらった。

亀だけは、事務所の俺のデスクに置いた。
あれから一ヵ月。あの亀がもたらす幸福効果は今のところ不明だ。