このレストランは、デザートだけバイキング形式だと佐鳥さんから聞いてはいたけれど、想像以上の種類の多さに驚いた。

私の知るデザートバイキングは、ひと口大の四角いケーキが数種類あって、あとはプリンや杏仁豆腐、ソフトクリームがいいところだった。

それなのにこのバイキングは、ケーキはケーキ屋さんで売っているようなものが十種類以上並んでいるし、色とりどりのマカロンや、背の高いグラスに入った数種類のパフェ、何段にも重なった視界的にも楽しいゼリーなどもあり当然ながら食べ放題だ。

岩倉さんの身長よりも高いチョコレートフォンデュのタワーまであって、圧倒された。

「すごいですね……」

私の知っているバイキングとは種類も豪華さもまったく違っていて驚く。

岩倉さんがトレーを渡してくれるので、目移りしながらも厳選していく。
いくら全部おいしそうだからといって、欲張って結果的に残すことになったら申し訳なさすぎるので、お腹と相談しながらケーキをとる。

岩倉さんは興味なさそうに私の隣に並んでいた。
そういえば、岩倉さんは甘い物は苦手だったと思い出す。

「あの、私ひとりでも大丈夫ですよ。岩倉さん、デザートはなにも食べないですよね?」

私に気を遣ってくれたなら悪いなと思い言うと、岩倉さんは「いや」とひとつ息をついた。

「俺が少しあの席から離れたかったんだ」
「そうなんですか……」