くすんだ水色のセットアップを着て、クラッチバックを持っている女性はとてもスタイルがよく、まるでモデルみたいだと思った。
顔立ちもハッキリとしていて美人だ。
なによりも、パキッとした明るい笑顔に目を奪われる。
「やっぱり。今日はお仕事ですか?」と笑顔を浮かべた女性に、岩倉さんは「いえ。プライベートなんです」と答える。
岩倉さんも女性も、お互いに敬語だ。
どういう関係の方なんだろうと考えていると、女性の視線が一瞬私に向けられた。
「ずいぶん、若い子を連れてるんですね。親戚……姪っ子さんとかでしょうか」
「いえ。そちらは、お仕事ですか?」
岩倉さんは、女性の疑問に短く答え聞き返す。
女性は少し不思議そうにしてからにこやかに笑った。
「ええ。父のお使いで。でももう終わったので……ああ、もしかしたら上でランチですか? ここのデザートバイキングおいしいですものね」
「そんなところです。友人に誘われたので……すみません。予約の時間もありますので、これで」
やや強引に会話を切り上げた岩倉さんが会釈をして踵を返す。けれど、そのまま歩き出そうとしたところで女性の声が追ってきた。
「あの、実は私、お昼まだなんです。図々しいのは承知の上でのお願いなのですが、ご一緒してもいいですか?」
にこりと笑い首を傾げた女性に、岩倉さんは女性には見えない角度で一瞬面倒くさそうに眉を寄せてから「友人に聞いてみます」と携帯を取り出した。



