そう言えば、あたしはまだ陸斗の浴衣姿をどう思ったのか言っていない。

 陸斗はあたしの浴衣姿を褒めてくれたのに。


「着いたぞ」

 陸斗の言葉にハッとして気付いた。
 もう家の前に来てしまっている。

 離れがたくて、繋いだ手をキュッと握ってしまう。

「灯里?」

 不思議そうに問いかけられ、あたしは「あのっ」と声を上げた。


「あのね、そう言えばまだ言ってなかったと思って……」

 すぐに言葉にしないあたしを陸斗はじっと待っていてくれる。

 改めて言うとなると照れてしまってなかなか言葉が出てこなかったけれど、少し彼から視線をずらして一気に言う。


「陸斗のその浴衣姿、すっごくカッコイイ」

 本当はもっと褒めたかったのだけれど、ドッドッと胸の奥が激しく鳴ってそれ以上言葉が出せなかった。


 陸斗は「そうか」と言うと、あたしの顎を軽く掴み上向かせる。

 整った彼の顔が、優しくあたしを見下ろしていた。