あの後陸斗は彼らに元総長であることを口止めしていたけれど、あたしは心配でならなかった。

 人の口に戸は立てられないと言うし、何よりちゃんと黙っていてくれる様な人なのか、彼の人となりを知らない。

 それでも花火を見ていたら少しはその心配事も吹き飛んだ。


 どぉおん、と大きな音を立てて大輪の花が咲く。

 夜空が花で彩られ、圧巻としか言いようがなかった。

 最後のしだれ柳の様に垂れて来る錦冠菊(にしきかむろぎく)はとても大きくて、悩みごとなんて本当に吹き飛ばされてしまう様。


「花火、良かったな……」

「うん……」

 花火の余韻(よいん)に浸りながら陸斗と二人、帰路につく。

 繋いだ手が熱いけれど、離したいとは思わなかった。


 夜も遅いからと、陸斗はあたしを家まで送ってくれている。

 だからいつもより一緒にいる時間は多かったはずなのに、まだ足りないと思ってしまう。

 家が近付くほどに、もっと一緒にいたいと思ってしまう。