地味同盟〜地味男はイケメン元総長〜

 あたしは表情を固めてどうするべきか頭をフル回転させていた。

 でもいい案は浮かんでこない。


 陸斗は以前の仲間に会えて喜びつつも、戸惑いと焦りを含んだ顔をしている。

 きっとあたしと同じく気付いたんだろう。

 そう、彼と一緒にいた隣のクラスの男子の表情が、驚いたものになっていることに。


「え? 兄さん、そいつ知ってるの? 総長って?」

 ここですぐに誤魔化せば良かったんだろう。
 でも、誤魔化す隙も与えずそのお兄さんは笑顔で言ってしまった。

「ほら、俺暴走族入ったって前教えただろ? 実力主義の“火燕”ってグループに! そこで去年総長やってたケンカがめっちゃ強い中坊がコイツだよ! 高校入る前に辞めちまったけどな」

 それはそれは楽しそうに、自分の事の様に言うお兄さん。


 あたしは、灰になってサラサラと崩れ去りたい気分になる。

 隠していたことをアッサリバラされた。
 悪気なんてこれっぽっちもなく。


 目の前で驚愕の表情になる同級生を見ながら、あたしは途方にくれたのだった。