流石にあたしも彼には良い印象はない。

 まあ、メイクをしている間は気にならないんだけれど……。


 だからさっさと終わらせようと作業を進める。

 メイクを始めるとヘラヘラしていた彼は息を呑んだけれど、それも気にせず進めていく。

 一通り終えると、あたしはいつもの様に微笑んだ。


 ただ、微笑んだと同時に現実に戻る。

 あたしってば、何でこんな奴にまで笑いかけてるのよ。

 いくら集中していたからって、コイツが嫌いだってことは変わりないのに。


 自分にちょっと嫌気がさしてしまっていると、突然両手をギュッと握られた。

「へ?」

 何事かと思い目の前の彼を見ると、その顔が近付いて来るのが分かった。


 何か、既視感が……。


「好きだ」

「は?」

「ヤバイ、すげぇドキドキしてる。倉木、やっぱり俺と付き合――」

 彼のそのセリフは最後まで口にすることは叶わなかった。