「じゃあ、始めるね」

 そう告げていつものルーティン。

 瞼の裏に映るのは今日まで考えていた彼女のメイク。

 今からこれを(ほどこ)すの。


 ワクワクする気持ちを少し落ち着かせるように深呼吸をして、あたしは目を開けた。

 さあ、メイクの時間だ――。



 ……一通りの作業を終え、チェックする。

 うん、このタイプのメイクは久しぶりだったけれど、上手く出来たと思う。

「いいよ、完成」

 そう終了の言葉を告げた。


「……」

 でも、彼女はその黒目をあたしに向けたまま動かない。

 そう言えば美智留ちゃん達にメイクしたときもこんな風にすぐには鏡を見てくれなかったっけ。


 そんな風に思い返していると、「すごい……」と小さな呟きが聞こえた。