地味同盟〜地味男はイケメン元総長〜

 口紅用の筆が見当たらない。

「あれ? どうしよ、どこやったかな?」

 ちょっと困って、記憶を手繰り寄せる。


 無くしたんだとしたらきっと空き教室だよね。

 最後は本当に急いでいて、道具も慌てて仕舞ったから。


 陸斗くんをチラリと見て、先に取って来た方がいいだろうと判断した。

 帰ろうって誘ったら、あとは早く校内から出た方が良さそうだったから。



「灯里、どうしたの?」

 丁度美智留ちゃんがあたしの様子に気付いて近くに来てくれた。


「あ、筆が一本足りないみたいで。空き教室だと思うから、取ってくるまであたしのメイク道具見ててくれる?」

 だからそう頼んで、あたしは足早に教室を出る。


 空き教室に入ると、メイクをしていた机の上にポツンと筆があるのが見えた。

 やっぱり仕舞い忘れてたんだな。


 手に取ってホッと安堵の息を吐くと、ガラガラと入って来た時に開けたドアが閉められる音が聞こえる。