案の定、と言えばいいのか。

 誰もあたしだとは気付かないらしい。

 先生は分かっているはずなんだけれど、信じられないかのように何度も瞬きをしたり目をこすっている。


「見て分かるように、メイク上手でしょう? だからメイクの実演はこの子、倉木 灯里さんに頼もうかと思ってるの」

 美智留ちゃんはそう言うと、そっと自分の耳に手を当てた。

 何してるんだろうと思ったら、いつものメンバーが揃って耳を塞いでいるのが見えた。


 え? 何で耳塞いでるの?


 疑問に思った直後、「くら、き?」と誰かの呟きが聞こえ、そしてーー。

『えええぇぇぇぇぇぇ!!!???』

 大音量の叫びが教室内に響いた。


 耳を塞ぎそびれたあたしはそれを直に受け止めてしまう。


 うっ……鼓膜が痛い……。


「嘘だろ? あの地味な倉木?」

「メイク上手いってレベルなの!?」

「むしろこれ整形メイクとか言うやつじゃねぇ?」

 さっきよりは大音量ではないけれど、十分に騒がしく皆それぞれ言葉を発している。