「ヘアアレンジはあたしがやるわ。でもメイクはもっと得意な子がいるから。……入って来て」

 美智留ちゃんの言葉を合図に、沙良ちゃんがドアを開ける。

 一歩教室に入ると、クラス全員の視線があたしに(そそ)がれた。


 一瞬怖気づくけれど、無意識のうちに陸斗くんの席に目を向けていたんだろう。
 似合わないメガネの奥からでも分かる力強い眼差しと目が合って、背中を押してもらえた様な気がした。


 あたしは止まりそうだった足を動かして、教壇の上に立つ美智留ちゃんの横に立つ。

 引きつりそうになる顔を叱咤(しった)して、笑顔でいるように(つと)めた。


「え? 誰?」

 真っ先に聞こえたのは誰かのそんな言葉。


「見たことない子だよな? 美人じゃね?」

「他のクラスの子? でもそれだとクラスの出し物には出て貰えないよね?」

「でもこのクラスで今いないやつであんな子いないだろ?」