地味同盟〜地味男はイケメン元総長〜

　さりげなさ過ぎて、逃げ遅れる。

「うーん。鶴って呼んで欲しいって言ったんだけどな？　あと、お礼ならこっちがいい」

　そう言って顔が近付いて来る。


「ちょっ！」

　何をするんだと抗議の声を上げる暇もない。


　視界の端で陸斗くんが反応したのが見えたけれど、少し遠い。

　抵抗しなきゃ、と思うと同時に杉沢さんの両手が誰かに弾かれ、ドンという音と共に彼が押されて距離が開く。


　その間に、美智留ちゃん達が入って来た。


「感謝はしてます。……でも、セクハラは厳禁です」

　美智留ちゃんが代表するようにそう告げる。


　か、カッコイイ……。


　あたしを守ってくれるように立ち塞がる三人の背中がとてもカッコ良く見えた。


「……今日は邪魔者が多いなぁ。ま、仕方ないか」

　残念そうというよりは何だか楽しそうな声音でそう言った杉沢さんは、持っていたバッグから何かケースを取り出す。