地味同盟〜地味男はイケメン元総長〜

 獲物を丸のみしようかと(たくら)んでいそうなその口が開いた。

「君、名前は?」

「え? えっと、倉木 灯里……ですけど……」

「そう、灯里ちゃんね」

 そう言って微笑む杉沢さんだけれど、眼差しの色は変わらない。


「君、凄いな。メイク中、ゾクゾクしたよ」

 にじり寄って来た杉沢さんは、あたしの顔を両手で包み込むように固定した。

「なあ……日高なんかやめて、俺の彼女になんない?」

 熱のこもった吐息が近付く。

「ね、灯里ちゃん」

 そのまま、唇が触れそうになる。


「や――」


 やだ!!


「灯里!」

 そのとき、待ちに待った声がした。

 その声のおかげで杉沢さんの動きもピタリと止まる。


「灯里! ここか!?」

 穴の開いた障子戸に、声の主の影が現れた。

 それを確認するためか、杉沢さんの顔が少し離れる。