あたしの制止の言葉に日高くんは面倒臭そうに「なんですか?」と振り返った。

「俺も人待たせてるんで、探さないと」

「いや、その……」


 完全にあたしだと分かっていないみたいだ。

 中学の頃は散々メイクをして同級生と会っていたけれど、誰か分からないと言われるほどじゃなかった。

 だからまさかこんな反応をされるとは……。


「用があるなら早く言ってくれませんか?」

 イライラした調子で言われて、早くあたしだと気付いてもらわなければと思う。

「あ、だからあたし――」
「それとも、お姉さんも男(あさ)ってたとか?」


 何だか今日は言葉を遮られることが多い。

 人の話は最後まで聞こうよ男ども!


「それじゃあナンパ邪魔して悪かったなぁ?」

 ニヤリと笑う日高くん。

 そして彼はメガネを外してあたしを真っ直ぐ見た。