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それからあたしは朝早くから開いている近所の病院へと向かった。


階段から落ちたと説明すると、初老の先生はいぶかしげな表情を浮かべてあたしを見た。


あたしはそれに気がつかないふりをして、先生の手元へ視線を落とす。


「頭の傷はたいしたことないから大丈夫だよ。切り傷があるけれどもう塞がっているから。それより、本当に階段から落ちたの?」


カルテになにか書き込みながら聞いてくる先生に「はい」と、短く答える。


あまり長く会話をしていてボロを出したくはなかった。


「そう。まぁ、なにかあったら連絡しなさい」


先生はそう言うと痛み止めや化膿止めを処方してくれた。


これでひとまずは安心だ。


ホッと胸を撫で下ろして、今度はそのまま学校へ向かった。


まだ少し早い時間だったけれど、学校に近づくにつれて同じ制服姿の生徒たちを見かけるようになった。


頬の腫れを気にしながら教室へ向かうと、途端に教室内から大きな声が聞こえてきてあたしは廊下の途中で立ち止まった。


今の声は間違いなく咲だった。


咲の歓喜に満ちた声。


少し躊躇したけれど、廊下にぼーっと突っ立っているわけにもいかなくて、あたしはA組の教室のドアを開けた。


教室の中央に咲たち3人がいて、視線がぶつかった。