たどり着いたのは3階の渡り廊下だった。


もう授業が始まる時間だし、あたりには誰の姿もない。


渡り廊下の窓は換気のために開けられていた。


「話ってなに?」


あたしは窓から吹き込んでくる風に前髪をおさえながら、咲に聞いた。


咲は人を射抜くような鋭い視線を向けてきて、たじろいでしまいそうになる。


しかし、どうにか見返すことができた。


「どうしてあんただけなにもないの?」


その質問の意味がわからなくて、あたしは首をかしげた。


咲は一歩近づいてくる。


「あたしたちはみんなで絶対様を作って、絶対様にお願いをした。それなのに、どうしてあんただけ無傷?」


聞かれてあたしは一瞬視線をそらしてしまった。


「そんなのわからないよ。みんなの怪我とかが絶対様のせいだって思っているの?」


「とぼけないでよ!」


咲が壁を殴りつけた。


「あたしたちの共通点はそれしかない。その中であんただけなにも起こってないんだから、あんたがなにかしたに決まってる!」


もう授業が始まっているというのに、咲が容赦なく叫び声を上げる。


あたしは思わず両手で耳を塞いでいた。


至近距離で叫ばれると鼓膜が痛い。