真里菜の腕の骨を折ったのも、きっとこの男だ。


「やぁ、真里菜ちゃん」


男の声が聞こえてきて全身が震えた。


その声はひどく粘ついていて、体中にからみつくような不快感のある声だったのだ。


「あ、あんた……」


真里菜が数歩後ずさりをする。


どうやら真里菜もこの男に見覚えがあるみたいだ。


「真里菜ちゃんから会いに来てくれるなんて嬉しいよ」


男が舌なめずりをする。


その舌の異様な赤さに恐怖すら感じる。


あたしも早くここから逃げたほうがいいかもしれない。


巻き込まれたら大変なことになる。


しかし、2人ともあたしには全く気がついていない様子だ。


男がゆっくりと真里菜に近づいていく。


真里菜は後ずさりをするが、足が地面にひっかかってそのまましりもちをついてしまった。


片腕が使えない真里菜はすぐに立ち上がることも困難だ。


必死に体を動かしている間に、男が真里菜に馬乗りになっていた。


あたしは両手で自分の口を押さえて、必死に悲鳴を押し殺す。