「お前は僕が彼女を構うからと、嫉妬に駆られ、か弱い彼女を虐げていたな」

ギルバートの張り上げる声にソフィアは目を伏せ、そばに立つ男子生徒の一人が慰めるよう肩に手を置く。
 いつの間にか会場は静まり、楽団の演奏だけがそっと空間に満ちていた。


「可哀想なソフィア」


 そうギルバートが彼女にかける声は気遣いにあふれていたが、エドナはただ静かにため息を落とす。

 可哀想だなどと、戯れ言にしか聞こえない。最初に抱いた感情はそうだったのかもしれないが、もはや憐憫のような言葉が適していないのは態度を見るに明らかだ。
 仮に可哀想に見える状況に陥ることがあるとすれば、それこそ彼ら自身のせいに他ならない。

 父親に引き取られたことで庶民から男爵令嬢になり、一人娘だからと可愛がられながらもあえて選んだかのような質素な振る舞い、中途入学した学園では令嬢らしからぬ素朴でひたむきな様子が健気だと有力貴族の子息である多数の男子生徒に囲われ、……面白くないと思う者が出てくるのは致し方ないことだろう。

「私には誰かを虐げるような趣味は持ち合わせておりませんし、どうして私が嫉妬など?」
「シラを切っても無駄だ、目撃証言も物証も揃っている」

 目を釣り上げたギルバートは命じ慣れた者の態度で、合図を受けた周囲の数人がにわかに動き出す。


「これはお前のものだろう」


 彼は脇から差し出されたトレイの上に載ったそれを、乱暴に掴んで突き出した。