私は階段を降りながら、ふと今までのことを振り返る。


…──冷静になって思い返してみれば、朝陽くんが私のことを避けるようになったのって、私が成宮さんに階段から突き落とされた翌日からだよね。


あのとき保健室で朝陽くん、辛そうな顔で『俺、美月を好きでいる資格、あんのかな』って言ってたし。


何か、関係ある気がしてならない。


私は朝陽くんに遊ばれてたって、さっき一晴くんは言ってたけど……どうも引っかかる。


高校1年の頃の私だったら、もしそう言われたらやっぱり遊びだったんだって、すんなり思っただろうけど。


一晴くんに “ 遊ばれてた ” と言われて、一瞬心が乱れてしまったけど。


いまの私は……自分が朝陽くんに遊ばれていたとは、簡単には思えない。


だって、今まで私に好きだと言ってくれていた朝陽くんのあの目は……確かに本気の目だったから。


私が「かっこいい」って言ったり、「朝陽くん」って初めて名前を呼んだときの朝陽くんは、心から喜んでいる感じだったし。


『俺が美月のことを本気で好きだって信じてもらえるまで……何度だって言うよ、" 好き " だって』と、言ってくれたから。


他にもこれまでの彼の言動から、真剣に私を想ってくれていたんだってことが、たくさん伝わってきたから。


そんな朝陽くんのことだから、私を避けるようになったのもきっと何か理由があるのでは? と思う。


今まで私に好きだと言ってくれていたのは、遊びではなく本当だったって、誰になんと言われようと今なら信じられる。


私は、朝陽くんを信じるよ──。