決意を宿す、まっすぐな瞳。オスニエルは飲み込まれそうな気がする。
 国を生かすことを考えるのはオスニエルの使命だ。今まではずっと、領土を広げることがこの国を生かすことだと信じて疑わなかった。新しい領土から、搾取すればこの国は潤い続けるからだ。

(だが、他国が自分の国だと……?)

 フィオナは迷わずそう言った。彼女がこの国を受け入れたのだ。それはつまり、自分の妻として生きることを受け入れたということだ。

 ふいに、顔が熱くなってくる。
 オスニエルは口もとを押さえて呻いた。

「どうされました?」

「いやっ、何でもない」

 彼女が自分の妻として生きようとしている。
 それに、なぜこんなに動揺するのか。オスニエルには自分の気持ちがわからない。

「俺は帰る」

「殿下! 殿下のご用はなんだったんですか」

「それは……」

 オスニエルは一度口ごもり、そしてできるだけ冷淡に聞こえるように、抑揚なく告げた。

「お前の次の孤児院視察に同行する」

「はぁ?」

「異論は認めない。いいな」

「ちょっと!」

 オスニエルは足音高く出ていってしまう。

「……何なの」

『あいつ、子供みたいだな』

 ドルフが膝に顎を乗せてきて、そう言う。

「子供みたい? そうかしら」

『フィオナはもう少し、男心がわかるようになった方がいいんじゃないか』

 馬鹿にしたように言われ、フィオナはドルフの頭を軽く叩く。彼は、不満そうに「クウン」と呻き、ポリーにおやつをもらいに行ってしまった。